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熊野林業について

財団設立の経緯



 平成4年4月の設立から、森林の自然環境を重視した林業のあり方を研究主題にし、諸活動を実施してきました。

 森林は近年、二酸化炭素(CO2)の吸収源として注目されています。その他にも水源涵養や土砂流出防備などの公益的機能の十分な発揮が問われているところです。そもそも森林は、木材生産と自然環境の両面を合わせ持っています。

 私たちは、森林の自然環境を維持しながら、木材などの恵みを少しずつ収穫するという「非皆伐・択伐」方式で山林の経営を行ってきました。その結果、森林は杉、桧が上層木を占有し、カシ、シイなどの広葉木が中間層に点在し、下層には灌木や草本類が繁茂するという美しく健全な森になります。

 日本の森林が美しくあればと願い、「非皆伐方式」の研究と啓発をはかっていきます。 また、素晴らしい熊野の天然林にふれていただく為に「森林自然公園」を設置して、 多くの方々に来ていただきたく願っています。

 これからも公益財団として、森林の自然環境を大切にしながら、研究と啓発活動を図ってゆきます。尚、平成25年4月1日から、公益財団法人として、和歌山県から認定を受けて、新しいスタートを切りました。

非皆伐(長伐期)方式 ~天然型複層林を目指して~


(1)基本方針 

 従来の林業は土地に木を植えて育てて一斉に収穫すること、その繰り返しのことと考えているのが一般的である。さらに、木材を生産する業を主体とする限定的な考え方が多い。 


 しかし特に近年森林の国土保全機能、それは治水利水の水源涵養機能、炭酸ガスの吸収及び酸素の供給等による大気浄化機能、気象の緩和機能、景観維持等美的効用など、多数の公益的機能が強調されてきた。従ってこれらの公益機能のみを目的にする、公益林業も存在するはずである。 

 林業とは森林と人間とのかかわりあいの中で、人間が森林をどのように取り扱い、森林の機能効用をどのように活用するかが要点となる。 

 森林の木材生産機能も諸々の公益的機能も何れも森林の機能であるから、森林の存在がなくて存在するはずがない。また、生産林であっても公益的機能を持たない森林は存在ないし、生産を伴わない公益林もない。従って公益林と生産林を峻別する意味はなく、あらゆる森林は総て公益林として取り扱うべきであろう。いかなる森林もその最大の森林破壊である皆伐というような事が許されて良いはずがない。 

 従って今後の林業は皆伐一斉収穫を廃する方向で再出発しなければならない。 

 林業においては幸いに公益と生産両機能は本来両立するものであり、決して相背馳するものではない。両機能が最も良く発揮されるのは健全で活力に溢れた森林に於いてであり、決して脆弱で不健全な森林に於いてではない。従って如何なる林業も健全で活力に満ちた森林を恒常的に維持し続ける、即ち良い森林を恒続する営みでなければならない。このような営みを森林経営といい(=営林)、営林こそが林業の本質であり決して森林を造ったり壊したりすることが林業ではない。 

 皆伐施業を廃し、森林の公益性と林業の生産性を両立させ、林業経営を建て直しする非皆伐施業の実践とその具体的成果の実績を示し、その普及を図ることは焦眉の急を要することであり、ここに財団法人としての存在価値があるものと確信する所以である。 

 一方、木材価格については長期低迷の状況にあったが、ここ数年は特に厳しい下落の道をたどっている現状であることから、従来の50~60年伐期では合わなくなってきている。このことから、長伐期施業と択伐施業が一体となった施業を実践することが自然と人間の共存共栄をはかる最も有効な方策であり、今般の寄附された山林のとりわけ高齢林がその価値を発揮することになるだろう。 

(2)具体的方法


 当財団は平成4年設立以来前述のような基本的理念に基づき、自然との調和を図った林業経営(営林)を目指すための具体的運用について、当財団の所有山林を主体として研究データを積み重ねて、その成果を広く一般に示して啓発を図ってきた。 

 寄附された山林については、一斉皆伐を禁止して非皆伐の天然型複層林をめざすこととする。

 その方法は、まず成熟した高齢の植林木等(杉・檜等)を抜き切りし(この場合、樹下にある天然木等は可能な限り残す)、もしそこに十分な空間ができたなら樹下植栽(天然更新を含む)を実行してゆく。このようにすれば自然環境を崩すことなく、且つ抜き切りした成熟木(高品質が多い)により高収入をえることが可能となる。この方式の繰り返しにより、森林は多種多様な天然型複層林の林型を形作ってゆくことになる。この場合最も大切なことは非皆伐という点であり、これが出発点となる。 

 この天然型複層林を目指す手順をもう少し具体的に説明すれば、


 第1に抜き切りの方法としては周囲を被圧しているような成熟木を主体に、全体のバランスを考慮して抜き切ってゆくことになる。

 第2に抜き切り後の林内の状態をみて適度な空間が出来れば、そこに随時植栽又は天然更新をしてゆくが、この時に植林などには出来る限り費用をかけない方法をとることがポイントになる。

 第3にいわゆる雑木と呼ばれる天然木なども出来る限り残して、多少植林木の成長を妨げることがあっても、天然林と人口林の共存を図ってゆくべきである。

 第4に下層木の保育(下刈、除伐、枝打等)については必要最小限の範囲にとどめることがポイントであり決して下層木を育てることに主眼をおくべきではない。

 第5に上層木の成長により鬱閉度が進んでくれば適時抜き切り、下層に再び植林を施す。但し、伐採の条件は全体の森林成長量を決して上まわってはいけない。

 この第1~第5の繰り返しにより天然型複層林が次第に形成されていく。この方式によれば、下層木の成長は遅くなっても一本一本の材質としては上質の材が出来るので、自然の保持しながら且つ林業としての収益性を高めてゆく方法として、この天然型複層林施業は理想的であるといえる。 

 ところで上記の施業方式を実行継続していくために、林業経営一般に欠かすことの出来ない事に作業道の開設がある。この作業道についても、ただ単に道路を取り付ければ良いというのではなく、やはり自然環境を崩さない事が最大のポイントになる。幸いにも大橋慶三郎氏の指導により、自然の地形に逆らうことなく且つ自然環境を壊さないで必要最小限の巾員で路網密度を最大限上げてゆこうとする工事技術を研修し実践を行っている。この方式の導入は前記天然型複層林の基本方針に沿ったものである。 


(3)むすび 

 当財団に寄附された山林については高齢木の抜き切りによる収穫を図り、適時下層に植栽等をほどこしながら天然型複層林へと誘導し、且つそれらのデータを集積して広く一般に啓発してゆく所存である。一方、上記の作業道についても適時開設し自然と一体となった道づくりを実践して多くの方々の見学学習を受け入れてゆくことも同時に進めてゆきたい。 


 このようにして、当財団の目的達成により弾みがつくことになると確信するところである。 

 以上の様な施業方法は永久に続けて行かなければならない。
 民間の経営では代が代わる度に方針が変わり皆伐方式に戻るようならば永年の苦労は無に帰し、この様な高齢の貴重な山林は永久保存が出来ない。
 財団の所有として、永久保存とこの方針を後世に残すことに大いなる意義がある。 

 

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